出典:Craft MAP白地図に筆者が加工
長崎県で注意しておきたいのは、主に陸域・沿岸部の浅い場所、太平洋側沖合で発生する地震になります。
太平洋側から離れた位置にある長崎ですが、南海トラフ巨大地震の影響を受けることが予想されています。
特に、諫早湾の干拓地周辺は周りに比べて弱い地盤となっているため、他の地域より揺れが大きくなる可能性が指摘されています。
また、雲仙周辺や福岡県には活断層がひしめき合っていますので、突然の大地震にも警戒しておきたいところです。
ここでは、長崎県に影響する地震についてどんなものがあるのか、沖と陸それぞれについて把握しておきましょう。
地震の種類
出典:気象庁 https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/jishin/about_eq.html
地震には、大きく分けて「プレート間地震」「プレート境界地震」と呼ばれるものとプレート内で起こるもので「プレート内地震」に分けられます。
そしてさらに細かく分類されているんですよね。
収束型
・海溝型地震
・衝突型境界地震
発散型
すれ違い型
大陸プレート内地震(内陸地殻内地震・断層型地震)
・逆断層
・正断層
・横ずれ断層
海洋プレート内地震
・スラブ内地震
・アウターライズ地震
長崎県の海溝型地震(30年以内の発生確率)
出典:Craft MAP白地図に筆者が加工
長崎県に被害をもたらす可能性のある海溝型地震は南海トラフ巨大地震、安芸灘~伊予灘~豊後水道、日向灘で発生する地震になります。
南海トラフは、マグニチュード8~9クラスの巨大地震になる可能性があり、その発生確率は70~80%とかなり高くなっています。
太平洋から離れているため直接的な津波による被害は考えにくいですが、過去には津波が発生し長崎県に到達したこともあります。
また、揺れによる家の倒壊や、家具・塀・自動販売機などの転倒による怪我に注意しておかなければいけません。
特に四国沖~紀伊半島沖が震源となった場合に被害を受けると予想されます。
また、安芸灘~伊予灘~豊後水道、日向灘では中規模の地震が起きる可能性があり、南海トラフよりも近い場所のため被害を受けやすくなっています。
地震 | マグニチュード | 発生確率 (30年以内) |
||
---|---|---|---|---|
南海トラフ | 南海トラフで発生する地震 | 8~9クラス | 70~80% | |
日向灘および南西諸島海溝周辺 | 安芸灘~伊予灘~豊後水道 | 6.7~7.4 | 40%程度 | |
南西諸島周辺の浅発地震の対象領域 | ー | ー | ||
九州から南西諸島周辺のやや深発地震の対象領域 | ー | ー |
※2020年1月1日算出
出典:地震本部 長崎県の地震活動の特徴
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kyushu-okinawa/p42_nagasaki/
長崎県の活断層地震(30年以内の発生確率)
出典:Craft MAP白地図に筆者が加工
長崎県には雲仙付近に活断層がひしめき合っています。
お隣の福岡県では放射状に活断層が並び、ズレが生じれば長崎県にも影響を与えるでしょう。
いずれも発生確率は低くなっていますが、活断層があるということはいつ地震が起きてもおかしくありません。
活断層のなかには今まで存在が分かっていないものもあると考えられているので、確率が低いからといって油断してはいけません。
また、九州の他の県、四国、本州を震源とする地震の影響も受けることが予想されますので、広い範囲にわたって情報をチェックしておくようにしましょう。
地震 | マグニチュード | 発生確率 (30年以内) |
|
---|---|---|---|
①水縄断層帯 | 7.2程度 | ほぼ0% | |
②佐賀平野北縁断層帯 | 7.5程度 | 不明 | |
③布田川断層帯・ 日奈久断層帯 |
布田川断層帯 (布田川区間) |
7.0程度 | ほぼ0% |
布田川断層帯 (宇土区間) |
7.0程度 | 不明 | |
布田川断層帯 (宇土半島北岸区間) |
7.2程度以上 | 不明 | |
日奈久断層帯 (高野−白旗区間) |
6.8程度 | 不明 | |
日奈久断層帯 (日奈久区間) |
7.5程度 | ほぼ0~6% | |
日奈久断層帯 (八代海区間) |
7.3程度 | ほぼ0~16% | |
④雲仙断層群 | 北部 | 7.3程度以上 | 不明 |
南東部 | 7.1程度 | 不明 | |
南西部 (北部) | 7.3程度 | ほぼ0~4% | |
南西部 (南部) | 7.1程度 | 0.5~1% |
※2020年1月1日算出
出典:地震本部 長崎県の地震活動の特徴
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kyushu-okinawa/p42_nagasaki/
地震・断層の活動サイクル
南海トラフ
最後の地震活動
東海・東南海:1944年12月7日(昭和東南海地震)
南海:1946年12月21日(昭和南海地震)
地震の間隔:88.2年
日向灘および南西諸島海溝周辺
安芸灘~伊予灘~豊後水道
最後の地震活動:2001年3月24日(芸予地震)
地震の間隔:約67年
南西諸島周辺の浅発地震の対象領域
最後の地震活動:1938年6月10日(マグニチュード7.7)
地震の間隔:ー
九州から南西諸島周辺のやや深発地震の対象領域
最後の地震活動:1911年6月15日(マグニチュード8.0)
地震の間隔:ー
①水縄断層帯
最後の地震活動:679年1月21日~2月18日のいずれか(筑紫地震)
地震の間隔:14,000年程度
②佐賀平野北縁断層帯
最後の地震活動:不明
地震の間隔:約6,600年~19,000年程度(断層面の傾斜を60~80°程度と仮定した場合)
③布田川断層帯・日奈久断層帯
布田川断層帯(布田川区間)
最後の地震活動:2016年4月14日、4月16日(熊本地震)
地震の間隔:8,100年~26,000年程度
布田川断層帯(宇土区間)
最後の地震活動:不明
地震の間隔:不明
布田川断層帯(宇土半島北岸区間)
最後の地震活動:不明
地震の間隔:不明
日奈久断層帯(高野−白旗区間)
最後の地震活動:約1,600年前以後、約1,200年前以前
地震の間隔:不明
日奈久断層帯(日奈久区間)
最後の地震活動:約8,400年前以後、約2,000年前以前
地震の間隔:3,600年~11,000年程度
日奈久断層帯(八代海区間)
最後の地震活動:約1,700年前以後、900年前以前(744年の肥後の地震の可能性あり)
地震の間隔:1,100年~6,400年程度
④雲仙断層群
北部
最後の地震活動:約5,000年前以後
地震の間隔:不明
南東部
最後の地震活動:約7,300年前以後
地震の間隔:不明
南西部(北部)
最後の地震活動:約2,400年前~11世紀
地震の間隔:約2,500年~4,700年
南西部(南部)
最後の地震活動:約4,500年前~16世紀
地震の間隔:約2,100年~6,500年
長崎県の過去の主な地震
太平洋
684年:白鳳地震(M8 1/4)
887年:仁和地震(M8.0~8.5)
1096年:永長地震(M8.0~8.5)
1099年:康和地震(M8.0~8.3)
1361年:正平(康安)地震(M8 1/4~8.5)
1498年:明応地震(M8.2~8.4)
1605年:慶長地震(M7.9)
1707年:宝永地震(M8.6)
1854年:安政東海地震(M8.4)
1854年:安政南海地震(M8.4)
1944年:昭和東南海地震(M7.9)
1946年:昭和南海地震(M8.0)
南海トラフは、東海~九州まで強い揺れを引き起こし、津波、火災などによって甚大な被害をもたらしてきました。
東海エリア・東南海エリアで地震が起きた場合はあまり大きな影響は受けない予想されますが、南海エリアが連動して大地震になった場合には強い揺れを感じることでしょう。
1707年10月28日の宝永地震(マグニチュード8.6)では、49日後に富士山が大噴火が起こっています。
この地震では、長崎県でも津波による被害を受けています。
1854年12月23日には安政東海地震(マグニチュード8.4)が起き、翌24日には安政南海地震(マグニチュード8.4)が発生。
1944年には東南海地震(マグニチュード7.9)が起き、2年後の1946年には南海地震(マグニチュード8.0)が発生しています。
予言めいた噂も多い南海トラフ巨大地震ですが、信じるか信じないかは別として警戒は怠らないようにしていざという時に備えておくことが大切です。
安芸灘~伊予灘~豊後水道
1649年:安芸・伊予(M7.0)
1686年:安芸・伊予(M7.2)
1854年:安芸・伊予(M7.4)
1857年:安芸・伊予(M7.3)
1905年:芸予地震(M7.2)
1949年:安芸灘(M6.2)
2001年:芸予地震(M6.7)
2014年:伊予灘(M6.2)
17世紀から6回ほどマグニチュード6.7以上の地震が起きている安芸灘~伊予灘~豊後水道エリア。
南海トラフ巨大地震ほど大きな揺れにはなりにくいですが、近くで発生するため被害を受けやすくなっています。
1686年に起きたマグニチュード7.2の地震では広島県で2名が亡くなっていますが、今後起これば九州で被害が出る可能性も十分あります。
1905年の芸予地震(マグニチュード7.2)では、やはり広島で犠牲者11名、負傷者160名(全体で177名)となりました。
2001年の芸予地震(マグニチュード6.7)では、全体で2名が犠牲となり、福岡堅では負傷者12名(全体で261名)が出ています。
平均の発生サイクルは約67年と短く、マグニチュード6.7以下の中規模の地震も起きています。
日向灘
プレート間地震
1662年:マグニチュード7.6
1968年:マグニチュード7.5
ひとまわり小さいプレート間地震
1931年:マグニチュード7.1
1941年:マグニチュード7.2
1961年:マグニチュード7.0
1984年:マグニチュード7.1
1968年の日向灘の地震(マグニチュード7.5)では、高知・宮崎・愛媛・熊本・大分に被害をもたらしています。
大分や熊本では被害を受けているため、佐賀県に影響が出る可能性もりますし、警戒しておきたいエリアとなっています。
津波
室戸岬:124cm
土佐清水:236cm
宿毛:224cm
臼杵:135cm
蒲江:240cm
北浦:150cm
細島:132~198cm
一回り小さな地震においても、1984年の地震(マグニチュード7.1)で延岡・土佐清水で28cm、室戸岬で20cmの津波が観測されています。
陸域の地震
679年:筑紫(M6.5~7.5)
1657年:長崎(M不明)
1700年:壱岐・対馬(M7.0)
1703年:小城付近(M不明)
1725年:長崎・平戸(M6.0)
1792年:島原半島眉山(M6.4)
1828年:天草・長崎・五島(M6.0)
1831年:佐賀市付近(M6.1)
1889年:熊本(M6.3)
1898年:福岡市付近(M6.0、5.8)
1909年:宮崎県西部(M7.6)
1922年:千々石湾(M6.9、6.5 2回発生)
1984年:千々石町(現・雲仙市)(最大M5.7の群発地震)
1991年:周防灘(M6.0)
2005年:福岡県西方沖(M7.0)
2006年:大分県西部(M6.2)
2016年:熊本地震(前震)(M6.5)
2016年:熊本地震(本震)(M7.3)
1700年の壱岐・対馬(マグニチュード7.0)での地震では、家屋も多く崩壊し、石垣やお墓なども倒壊しています。
壱岐近海で起きたとされていますが、震源は不明ですが朝鮮半島にも被害が起き、壱岐近海には活断層がある可能性もあると言われています。
1792年5月の島原半島眉山(マグニチュード6.4)の地震は、噴火活動が影響したものとされ、眉山が大崩落を起こして有明海になだれ込みました。
その影響で津波が発生し、甚大な被害をもたらしたと言われています。
それ以前から群発地震が起きていて、1791年12月の地震では2名が犠牲に。
雲仙岳は1991年に大噴火を起こしていますが、1年半前から小規模の群発地震が起こっています。
その他、1922年の千々石湾(マグニチュード6.9、6.5)、1984年に現・雲仙市の千々石町で最大5.7の群発地震が発生しています。
千々石湾の地震では、犠牲者26名、負傷者39名、家屋は195棟が全壊となっています。
近年では、2005年に起きた福岡県西方沖(マグニチュード7.0)の地震により、長崎県で2名の負傷者、家屋の全壊が1棟となっています。
まとめ
長崎県では、南海トラフ、安芸灘~伊予灘~豊後水道、日向灘などで発生する大地震に警戒しておく必要があります。
また、雲仙付近では過去にも噴火と関連のある地震が何度も起きていますので、群発地震が起きた場合には噴火による被害にも警戒するようにしましょう。
南海トラフ巨大地震
マグニチュード:8~9クラス
30年以内の発生確率:70~80%
安芸灘~伊予灘~豊後水道
マグニチュード:6.7~7.4
30年以内の発生確率:40%程度
日向灘プレート間のひとまわり小さいプレート間地震
マグニチュード:7.1前後
30年以内の発生確率:70~80%
いざという時に逃げ遅れたり避難生活が困難になったりしないように、普段から防災グッズ、備蓄、被災時の行動、避難場所の確認、家族での話し合いなど、しっかりと備えておくようにしましょう。
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