日本は地震大国として知られていますが、火山も多く噴火の危険性も高い国。
近年の大きな噴火としては、2014年9月27日の御嶽山噴火があり58人の犠牲者、5人の行方不明者が出ています。
御嶽山噴火は、水蒸気爆発による「水蒸気噴火」とされていますが、他の山での噴火では「マグマ噴火」という名前なんかも聞いたりしますよね。
ここでは、噴火の基礎的知識であるメカニズムや噴火の種類・火山灰が人体や生活に与える影響についてお伝えします。
噴火のメカニズム(しくみ)
出典:気象庁 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/2-4.html
噴火は、地下深くで発生するマグマが地表・海中に吹き出してくる現象のこと。
火口が開くことで圧力が低くなり発砲することで、一気に体積が大きくなり噴出します。
発砲が少ない場合は、一気に吹き出さず溶岩流として地表に出てきます。
火山は、プレートの境界やプレート内のホットスポット位置していることが多い。
ホットスポットとは、地球の内部のマントルが対流して上昇する部分にマグマの発生が起き、その上で火山が活動しているエリアとなります。
海溝沿いでは、海側のプレートが陸側のプレートに沈み込む際に、水などの働きによってマントルの一部が融けて上昇。
上昇したことでマグマとなり、マグマだまりに溜められ様々な影響を受けて海中に噴出するのです。
これが海溝沿いで起きる噴火であり、海溝とほぼ並行に火山が分布しています。
気象庁では、火口からの水平・垂直距離にして100~30メートル範囲に固形物が飛ばされた際に「噴火」としています。
噴火の種類
噴火は、条件によって様々な種類に分けられています。
まず、メジャーな噴火の種類として3つ挙げられます。
・水蒸気噴火
・マグマ水蒸気噴火
マグマ噴火
マグマ噴火は、マグマが直接的に地表に噴出してくる噴火のこと。
さらに、マグマ噴火のなかでも、マグマや火山の質などによって細かく分けられています。
ハワイ式噴火
ハワイ島の火山に多い噴火様式で、マグマの流動性が高く揮発しやすい成分が少ないマグマによる噴火。爆発が起こらないという特徴があり、大量の溶岩が流れ、そのスピードは速い。
例:キラウエア山(ハワイ)、マウナ・ケア山(ハワイ)
ストロンボリ式噴火
ハワイ式よりもマグマの流動性はやや低く、小さな爆発を繰り返し、スコリアと呼ばれる黒っぽい玄武岩質の岩や火山弾が飛ばされ、液体状の溶岩も流れる。
例:ストロンボリ火山(イタリア)
ブルカノ式噴火
マグマの流動性は低く、粘性が高い安山岩質のものが多い。火山灰や火山礫(かざんれき・直径2~64mm)、火山岩塊(かざんがんかい・64mm以上)などが噴出。溶岩はやや固まった状態であるため流動性は低い。日本の噴火ではブルカノ式噴火が一番多い。
例:ブルカノ火山(イタリア)、桜島、浅間山
プレー式噴火(プリリー式噴火)
流紋岩質・安山岩質の粘り気のあるマグマを含む場合に発生。成長中の溶岩ドーム(粘度の高い溶岩によってできるドーム型の地形)が爆発を起こす。小規模の火砕流を伴い、降灰も見られることもある。
例:ムラピ山(インドネシア)、セント・へレンズ山(アメリカ)、プレー山(西インド諸島)
プリニー式噴火
ストロンボリ式噴火の大規模バージョンで、火山灰や軽石は成層圏にまで達する。巨大(もしくは中規模)な火砕流が発生し、広い範囲に被害をもたらす。
例:ヴェスヴィオ火山(イタリア)、富士山(1707年宝永大噴火)、浅間山(1783年天明噴火)
準プリニー式噴火
ストロンボリ式噴火より大きく、プリニー式噴火よりは規模が小さい噴火。火山灰、軽石、空震をもたらす噴火を繰り返す。
ウルトラプリニー式噴火(カルデラ噴火・破局噴火)
プリニー式噴火よりもさらに規模の大きい噴火で、発生することはあまりない。数十万年、数百万年の周期で起き、噴火のレベルとしては最大のものとなる。火山爆発指数VEI6以上を指し、1991年にフィリピン・ルソン島のピナトゥボ山で起きている。
例
VEI6:ピナトゥボ山(フィリピン)
VEI7~8:トバ湖(インドネシア)、イエローストーン(アメリカ)、鬼界カルデラ(鹿児島)
洪水玄武岩
数千万年に1度のペースで発生したと言われている。地表が大きく割れ、大量の溶岩が地表に出てくる。過去にインドのデカン高原で発生し、形成された玄武岩の面積は日本の1.5倍にも相当している。
水蒸気噴火
水蒸気噴火は、マグマが地表に出てこない噴火で、火山の内部の水が温められ噴出する「水蒸気爆発」を伴います。
規模は大きくないものの爆発的な噴火であるため、御嶽山噴火のように登山中に発生すれば噴石や火山灰が飛び散り人体に直接的な被害をもたらしてしまいます。
マグマ水蒸気噴火
マグマと大量の水蒸気が地表に噴出する爆発的な噴火で、マグマ噴火と水蒸気噴火が合わさったようなもの。
マグマと水蒸気が一緒に噴出することを「マグマ水蒸気爆発」という。
桁違いな噴出物量の噴火
噴出物の量・噴出速度によって被害が甚大になることがあります。
地球規模での被害が過去にも起き、そのうち2つの例として「ラカギガル割れ目噴火」「阿蘇カルデラ・姶良カルデラの噴火」が挙げられます。
ラカギガル割れ目噴火
1783年に起きたアイスランド・ラキ火山の噴火では、大量の溶岩が約130個・25キロメートルの火口列から噴出。
1億トンの亜硫酸ガス、800トンのフッ化水素などの火山ガスが放出され、異常気象をもたらしました。
人口は20パーセント減り、家畜は50パーセントが犠牲となる被害に。
火山ガスが原因となった霧が北半球を覆い、世界規模で気温が低下。
日本でも同じ年に浅間山で天明の大噴火が起き、「天明の大飢饉」をもたらしています。
阿蘇カルデラ・姶良カルデラの噴火
約9万年前に日本で起きた阿蘇カルデラや、約3万年前に起きた姶良カルデラの噴火では、大規模な噴火によってカルデラが形成されています。
カルデラの規模は長径が数キロ~十数キロメートルになることも。
阿蘇カルデラの噴火では、火砕流が熊本県・大分県の大部分と宮崎県北部を覆っています。
姶良カルデラの噴火では、シラス台地が作られています。
これらの大規模な噴火では、火山灰が日本中に降り積もることとなる。
場所による噴火の分類
噴火が起こる場所によっても名前が付けられています。
水によって噴火の様式が変わってくることがあるので、3種類を紹介しておきます。
スルツェイ式噴火(ウルトラブルカノ式噴火)
スルツェイ式噴火は、水面の近くで噴火が起きた際に、水がすぐに沸騰し爆発的なマグマ水蒸気爆発が発生します。
また、地下の浅い場所でマグマが地下水と接近したときにも同様の現象が起きる。
このような噴火は、「ウルトラブルカノ式噴火」と呼ばれていますが、1963年に海底火山お噴火により出現したアイスランドのスルツェイ島が典型的なウルトラブルカノ式噴火だったために「スルツェイ式噴火」と呼ばれるようになった。
氷底噴火(氷河底噴火)
氷底噴火は、名前の通り巨大な氷河の下で噴火した場合のもの。
規模が大きい場合は、氷を溶かし氷河の下が氷底湖となることがある。
巨大な氷底湖ができ、氷河の壁が耐えきれなくなり決壊したら大規模な洪水が発生ししていまう。
この大洪水を「ヨークルフロイプ」と呼ぶ。
水中噴火・海底噴火
水中で起こる噴火を「水中噴火」と呼び、海底火山のような深い場所で噴火した場合は「海底噴火」という。
海底のように水圧が高いところでの噴火は爆発が起こらず、溶岩はすぐに冷やされる。
火山灰が人体や生活に与える影響とは?
人体への影響
火山灰は、人体や生活に対して大きな影響をもたらしてしまいます。
火山灰を吸い込んでしまうと、呼吸器に以下の疾患をもたらす可能性があります。
・肺気腫
・ぜんそく
など
また、目に入れば眼球を傷つけることもあり、コンタクトレンズをしている場合は角膜剥離の可能性もある。
生活への影響
火山灰は洗濯物や車など、生活に直結する被害をもたらします。
常に火山灰を降らせている桜島がある鹿児島県では、降灰予報があり生活の一部となっています。
車に積もっても、ワイパーなどで除去しようとすれば傷ついてしまうので注意したい。
大規模噴火などで灰が大量に降り積もると、生産できなくなり農業に多大な影響をもたらします。
他、様々な被害について以下のものがある。
・自動車、鉄道、飛行機の運行
・大雨による土石流
・河川の氾濫
・水道水が濁る
・洗い流すことが多くなり水道料金がかさむ
・排水口を詰まらせる
・滑りやすくなり転倒
・電子機器の故障
など
まとめ
噴火にはマグマ噴火、水蒸気噴火、マグマ水蒸気噴火に分類され、噴出物の違いや場所の違いによってさらに複雑化しています。
特にマグマ噴火は多くの様式があり、超大規模のものとなれば地球規模での被害をもたらす。
日本では超大規模な噴火の可能性は低いですが、火山の近くに住んでいる場合や登山する際には、噴火警報・速報や降灰予報などチェックするようにしておきたい。