大地震の前にナマズが騒いだ、クジラが打ち上げられた、地震雲が出現した・・・様々な現象が今までも報告されてきました。
地震の前兆を疑わせる現象のなかに、「井戸の水」の変化というものがあります。
過去の大地震を記した文献にも見られ、地震予知とも言える現象だったことがうかがえるんですよね・・・。
地震予知・井戸の水が減る・濁るのは地震の前兆?
江戸後期の武士で今の高知県土佐清水市生まれの池道之助(1821-1872)は、1854年に発生した「安政南海地震」を経験。
手記である「今昔大変記」のなかの「嘉永七年寅年地震津浪記」には、井戸に関する以下の文が書かれています。
大地震の前には急に井の水へる物なり、へらぬ井戸は濁る物なり
然共(しかれども)地震せぬ前に干ゆえきづかぬ物也
汐のくるう時井戸の水にごれば必大地震の下地なり
また、現・和歌山県広川町で安政地震に遭遇した浜口梧陵(1820-1885)は、当日の様子を書いた手記「安政元年海嘯(かいしょう)の実況」のなかで次のように記しています。
午後村民二名馳せ来たり、井水の非常に減少せるを告ぐ。予之に由りて地異の将に起こらんことを懼(おそ)る。果たして七つ時ごろ至り大振動あり
広川町の古田庄右衛門(1833-不明)の「安政聞録」にも似たような記述があります。
不思議なる哉今日処により井の水さっぱり涸れし家あり
ただ、安政聞録のなかには、井戸の水に何の変化がなかった家もあったとも書かれています。
江戸時代の文献であるためどこまでが正しいのか疑問に思うこともありますが、これだけの記録があるということは都市伝説で済ませるにはちょっと無理がありそうですよね。
昭和までは井戸が津波の前兆と信じられていた!?
現代においても、1970年に刊行された吉村昭著「三陸海岸大津波」のなかで、岩手県の沿岸を襲った2つの巨大地震である明治三陸地震(1896)、昭和三陸地震(1933)について書かれてます。
2つの地震によって引き起こされた大津波が襲ってくる前、井戸が涸れたり濁ったりしたという異常現象が報告されていたというのです。
しかし、東日本大震災(2011)でも30~40メートル級の津波が到達した岩手県宮古市田老地区では、昭和三陸地震の津波の際に井戸の異変がなく、安心してしまい危機を招いてしまったとしています。
つまり、昭和三陸地震においても、井戸が津波が来るかどうかの目安になっていたと考えられますよね。
昭和三陸地震は、1933年3月3日2時30分という深い時間に発生していたために、多くの人が眠りについていました。
最大震度5とはいえ普通は津波の心配をしそうなところですが、三陸地方の言い伝えが影響し、避難せずに眠りについてしまったと書かれています。
「天候は晴れだし、冬だから津波はこない」と断言していた老人たちが多かったのだという。
この地震は震度5と、揺れはそれほどではありませんが、犠牲者1,522人、行方不明者1,542人、負傷者1万2,053人の被害をもたらしています。
東日本大震災でも防潮堤を越えることがないと楽観視して逃げなかった人、高台の家に住んでいるからといって安心して家にいた人などもいました。
想像以上の津波遡上高となり、岩手県の三陸地方では震度5であったにもかかわらず甚大な被害となってしまいましたよね。
井戸の水に変化がなかったために逃げなかったことと、楽観視して逃げなかったこと。
自然災害に絶対はないということを教訓として、沿岸では津波が来るんだと常に頭に入れておきたいところです。
中国・海城地震での事例では井戸水が増えた!?
一方、1975年2月4日に中国遼寧省(りょうねいしょう)で発生したマグニチュード7.0の海城地震(犠牲者1,328人)では井戸の水が増えたという報告があります。
前年の1964年6月に、中国政府は「遼寧省で大地震が発生する恐れがある」と予測し、前兆となる異常現象を住民から報告してもらう体制をとっています。
地震の2ヶ月前となる1974年12月に、ネズミが暴れたりヘビが冬眠から目覚め地上で絶命していたりといった動物たちの異常行動が報告されました。
さらに、井戸水は急激に増えたことが報告されていたのです。
1ヶ月前の1965年1月になると、動物の異常行動も多く見られるようになり、2月に入り小さな地震が多くなっていきます。
2月4日に政府が臨時予報を出して14時までに住民を避難させ、19時に海城地震が発生。
動物の行動や井戸の水位を目安にして地震に備えたという事例が実際にあったことには驚きを隠せません。
もちろん、異常現象ばかりにとらわれていてはいけませんが、もしかしたら異常現象を確認したら地震に備えるという考え方も大事なことなのかもしれませんね。
地震予知に対する気象庁の見解
とはいえ、地震を予知することは現代の科学では難しいというのが一般的な考え方となっています。
↓でも書いていますが、気象庁も地震雲などの地震予知は否定的な見解を示しているんですよね。
しかし、解明できていないだけで、何らかの影響がある可能性は完全に否定できてないものとされているんです。
他にも様々な動物の異常現象が各地で報告されていますが、防災の意識を高めるという意味では一定の効果があると思われます。
地震や津波が起きたら、「ここは安全だ」「自分は大丈夫」といった考えは捨て、命を守るためにはどのように行動すればいいのか、しっかりと確認しておくようにしておきたいものです。
まとめ
地震や津波の前兆として報告されてきた歴史を持つ、井戸の水の変化。
水位が減ったり涸れたり、増えることもあれば濁ることも・・・中国の海城地震では政府が住民から意見をくみ上げ予測を立てて的中させています。
井戸の他にも地震の前兆についての「都市伝説」的なものは様々で、いくつかは完全否定されていますが、防災への意識を高めるためには有効なのかもしれません。
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