【東日本大震災の教訓】災害時の避難では男女差がある?年配女性が逃げ遅れやすい理由

【東日本大震災の教訓】災害時の避難では男女差がある?年配女性が逃げ遅れやすい理由

地震や台風などの様々な災害時の避難において、行動に男女差があるというのをご存じでしょうか?

 

なんと、男性よりも女性の方が逃げ遅れやすい傾向があるというのです。

 

ここでは、過去の地震での資料を元に、女性が逃げ遅れやすい傾向にある原因についてお伝えしていきます。

 

今後、災害が起きた時には、これからお話しする内容を意識して避難するようにしてください。



災害時の避難では男女差がある?

男性よりも女性の方が避難時に逃げ遅れてしまう傾向があるといいます。

 

2011年の東日本大震災において、特に被害の大きかった岩手県・宮城県・福島県を例に見ていくと、60代を境に顕著に表れているんです。

 

警察庁「東北地方太平洋沖地震による死者の死因等について【23.3.11~24.3.11】」という資料では、犠牲者の数を男女別、年代別に表しています。

 

年代 男性(人) 女性(人)
0~9歳 229 237
10~19歳 202 217
20~29歳 277 238
30~39歳 453 394
40~49歳 538 578
50~59歳 910 973
60~69歳 1,494 1,451
70~79歳 1,794 1,965
80歳以上 1,290 2,091
合計 7,360 8,363

 

この資料は、2012年3月11日時点のもので、性別不明63名については入れていません。

 

女性の方が約1,000名ほど多く、特に年齢が上がるにつれて犠牲者が増えていることが分かります。

 

60歳以上の人口の割合
男性:28.9%
女性:35.0%
60歳以上の犠牲者の割合
男性:63.7%
女性:67.6%

 

もちろん、人口の男女差もあるため一概には言えませんが・・・。

 

ただ、1995年の阪神・淡路大震災での犠牲者数も、男性2,713人に対し女性3,680人とやはり約1,000人多くなっています。

 

これは約1.4倍の差となっているのです。

女性の方が逃げ遅れやすい理由(その1)

男女関係なく、体力の少ないお年寄りが逃げ遅れやすいのは仕方のないことなのではないか。

 

そう感じる方もいることかと思いますが、女性の方が多くなる理由がどうやらありそうなんですよね。

 

東日本大震災で被災し、岩手県・宮城県・福島県の沿岸地域で県内避難をしている被災者870人(女性525人、男性345人)にとったアンケート(内閣府・消防庁・気象庁共同調査「津波避難等に関する調査」平成23年)がいくつかあります。

 

そのなかで気になるのが、「避難の呼びかけを見聞きした人の情報の入手先」についてです。

 

男性の上位と、女性の上位では大きな違いがあります。

男性
・防災行政無線から:45.7%
・消防の車や人から:27.2%
・ラジオから:11.1%
女性
・防災行政無線から:45.0%
・消防の車や人から:18.3%
家族や近所の人から:18.3%

 

女性は、家族や近所からの情報を得てから避難しようとした人が多く、明らかに情報の伝わりが遅くなってしまうことが分かります。

 

ちなみに男性は、「家族や近所の人から」は4.9%となっているので大きな差が生まれています。



女性の方が逃げ遅れやすい理由(その2)

同じ方たちに聞いたアンケートの「避難したきっかけ」の項目でも明らかな違いが出ています。

 

男女ともにダントツで多かったのは「大きな揺れから津波が来ると思ったから」で、男性51.9%、女性45.9%。

 

しかし、女性の2番目が「家族または近所の人が避難しようといったから」で、23.3%もいたのです。

 

さらに、3番目に「近所の人が避難していたから」の16.5%となっています。

男性
・大きな揺れから津波が来ると思ったから:51.9%
・津波警報を見聞きしたから:23.3%
・家族または近所の人が避難しようといったから:13.9%
女性
・大きな揺れから津波が来ると思ったから:45.9%
家族または近所の人が避難しようといったから:16.6%
近所の人が避難していたから:16.5%

 

つまり、女性の多くが近所の方々の情報を元に避難をしようとしたということで、やはり逃げ遅れの原因となったと考えられるのです。

女性の方が逃げ遅れやすい理由(その3)

同様に、「避難するときに一緒に行動した人」を見ると、さらにはっきりと差が出てきます。

男性
・ひとりで避難した:29.2%
数名でまとまって避難した:64.0%
・最初は数人でまとまって避難したが避難するうちに一人になった:3.3%
・その他:3.6%
女性
・ひとりで避難した:13.1%
数名でまとまって避難した:82.1%
・最初は数人でまとまって避難したが避難するうちに一人になった:1.3%
・その他:3.5%

 

このことから、男性よりも女性の方が、地域や近所との繋がりが強いことがうかがえます。

 

普段の生活や近所との関係においては良い傾向でも、かえって逆効果になってしまった結果になっています。

 

災害時には、近所への声かけは行いながらも、速やかに避難することが非常に大事であることが分かりますよね。

 

地震が来たら「津波てんでんこ」を徹底して、沿岸では必ず高台に避難するようにしてください。

 

高齢者は迷惑をかけたくないと感じてしまう

足腰が弱っているお年寄りの方の中には、スムーズに逃げることができないため誰かに迷惑をかけたくないという心理も働きやすくなってしまうようです。

 

このような考えは、日本人の良さでもあるかもしれませんが、男女関係なく遠慮する必要はありません。

 

近所の家や地域の方々と、一緒になって助け合うのが基本です。

 

さらに、長く生きてきた経験から、これくらいであれば大丈夫だという心理も働きがちになってしまいます。

 

昨今の気象災害は、今までに経験のない被害をもたらすことも多く、過去の想定はまったく関係ありません。

 

そもそも避難指示が出ていることを知らなかったり、災害の状況がリアルタイムで把握できていない場合もあるといいます。

 

 

 

↑中国新聞の記事では、災害時のお年寄りの心理を書いてくれていますが、周りの人たちの呼びかけの工夫も重要なようですね。

 

川の氾濫がすぐにでも起こりそうだ」のように明確に危険が迫っている状況を、大げさなくらいに言ってあげることで危機感を感じてもらうのも大事なポイントになります。

 

まとめ

大きな災害時には、男性に比べて女性の方が逃げ遅れてしまう傾向にあるため、周りの人ばかりに頼らず一人でも逃げる行動力が求められます。

 

体力面のこともあるため難しいケースもあるかもしれませんが、特に60歳以上の年配の方は注意してください。

 

もしもの時にどうしたらいいのか分からないということにならないよう、普段から防災について考え、家族や周囲の方々と話し合っておくことが望まれます。

 

今後も災害は必ず起こりますので、地震・水害・火災などの避難行動についても把握しておきましょう。

 



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