【野焼き】3月頃に行われる農業の野焼きの目的は?法律違反じゃないの?

【野焼き】3月頃に行われる農業の野焼きの目的は?法律違反じゃないの?

春が近づく頃、田園地帯なんかでは田んぼの土手や河川敷を燃やしている風景を目にしますよね。

 

いわゆる「野焼き」と呼ばれるものなのですが、そもそも燃やしている目的をご存じでしょうか?

 

住んでいる場所によっては、煙が家に流れてきて迷惑に思っている人もいることでしょう。

 

そもそも、人為的に火を放つのって法律違反なんじゃないの?



3月に行われる農業の野焼きの目的は?

田園地帯で主に行われる野焼きの目的は、草の状態をリセットすることです。

 

冬の間、田んぼや河川敷には枯れた草が表面を覆っている状態となり、その下には新しい芽が育っています。

 

枯れ草を燃やすことで、地面の温度が上昇し発芽を誘発する物質(カリキン)を生成

 

地中で眠っている種子などを目覚め(休眠打破)させる効果があります。

 

また、炭により地温を上昇させ、有機物が無機塩類にすることで新しい草の肥料ともなります。

 

ダニや害虫も燃え、作物を育てるにあたって健康的な環境(田んぼ)となるのです。

日本の有名な野焼き

農業が盛んな地域では、主に3月頃に野焼きが一斉に行われ、一種の恒例行事となっています。

 

農業を営んでいない家庭にとっては、煙くて迷惑に思うこともあるでしょう。

 

昔から行っている伝統でもあり、地域で認められたものなので仕方ないものなんですよね。

 

風の影響などで小さな火災に繋がる可能性もあるので、将来的にはどうなっていくのか気になるところ。

 

とはいえ、全国的に見ると、有名な野焼きがいくつかあり風物詩ともなっています。

奈良・若草山の山焼き
阿蘇の野焼き
別府市の扇山火まつり・十文字原の野焼き
渡良瀬遊水地の葦焼き
大室山の山焼き
秋吉台の山焼き
房総の野焼き
仙石原の山焼き
平尾台の野焼き
都井岬の野焼き
東富士演習場、北富士演習場の野焼き

野焼きは法律違反じゃないの?

野焼きに対して、法律違反じゃないの?という疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?

 

結論から言うと、いくつかの法律に沿って行っているため、法律違反ではありません

 

森林法
森林や1キロメートル以内の土地で火入れをする場合は、市町村長の許可を得る必要があります。

 

消防法・火災予防条例
火災と勘違いされてしまう可能性がある行為であるため、消防機関へ届け出を出す必要があります。
火災警報発令中は条例の制限に従い行動し、場合によっては禁止命令などが出されることもあります。

 

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)
農業における野焼きは基本的に例外となるが、生活環境へ大きな影響を与える場合は罰せられる可能性もあります。

 

野焼きの時期に、どさくさに紛れて廃棄物を燃やすのはNGなので注意。

 

もちろん、他の人の田畑に火を放ってしまえば、放火となる可能性があるので絶対にやってはいけません!



環境問題への影響

大量の煙を出してしまう野焼きで気になるのは環境への影響でしょうか。

 

野焼きは「公害苦情」でくくった場合、日本で一番多い(全体の18.3%・2018年)原因となっています。

 

総務省消防庁の2018年1~12月の火災の原因では6番目になっています。

①タバコ
②たき火
③コンロ
④放火
⑤放火の疑い
⑥野焼き

 

また、野焼きは、枯れ草を燃やしているため微小粒子物質(PM2.5)が発生します。

 

特に、水分を多く含んでいる場合は、増加傾向となります。

 

環境省の「PM2.5等大気汚染物質排出インベントリ」では、2015年の野焼きでは約1万3,000トンのPM2.5を排出。

 

国内全体で約12万トンなので、1割ほどとなっています。

まとめ

農業における野焼きは法律違反ではありませんが、勝手に火を放ってしまうのはNGとなります。

 

野焼きの目的は草の生態系のリセットで、古い有機物を無くすし土壌を豊かにするために行っていたのでした。

 

次のシーズンに向けての下準備として野焼きは大事な工程ですが、環境や苦情との兼ね合いが問題となっている地域もあるため課題も残っているのです。



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